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2012年2月11日 (土)

消え行くテープレコーダー

朝気温−1度とやや冷たい。
パナソニックがVHSテープレコーダーの生産を止めたと今朝の新聞に出ている。去年だったかデオデオに買いに行ったら、船井電機のしかなかったから、仕方なくそれを買って帰ったのだったが、まだ作っていたのかいなと驚く。
売れなくなれば生産中止は仕方がないが、我が家の1000個以上もある(もっとも最近捨て始めたから今は3、4百かな)テープが見れなくなるというのも困るしなあ。
目下は2台機械があるから見る事は出来るが、機械ものは故障があるから、そのとき直してくれるかどうかだ。
現在はDVD録画が我が家でも主流だが、これもいつまでやらで、当てには出来ないな。

パソコンでもそうだが、文明の利器はどんどん進化して止まない。
必ず廃れて行く運命にある。レコードするということは古来最も必要とされつつも最も難しい事なのだ。

先日も70年前の母校(私が現に在校していた)が駅伝に優勝した新聞記録を訊ねた所、主催したその新聞社にはない(もっとも優勝したという記録はあるが詳細がない)、県立図書館にマイクロフィルム(新聞そのものの写真記録)がある筈だから聞いてくれと云われた。一番記録しやすい新聞社が自分のところの記事をすら全部は保存出来ないのである。
70年経ったくらいでもこれだから、記録保存の難しさが今更ながら理解できる。
そこに思い至ると、70年前を記憶している私の頭脳は立派なものだな、もっと云えば、古事記を暗唱した稗田阿礼はもっと凄いが伝承だから本当か嘘か分からない。

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河北君のシベリア送り脱出行(手記)(その31)

27、八路軍の徴用

4月に入って春らしく暖かな日が続き、郊外の山に桜の花が咲き始めたというニュースと共に、あちこちで独身の男女が徴用されたとの噂が聞かれた。徴用の対象は在来の安東居住の市民では無く、戦後満洲各地より集まってきた疎開者が主で、しかも独身者であった事も事実であった。雪子さんは特に心配してくれた。
”徴用が来ないといいわね”と慰めてくれた。兎に角戦後の日本人には仕事らしい仕事がないので、安東在住の人達は売り食いしても、疎開者は次第に生活に窮しつつあった。
従って徴用を希望するものも多く、多くの日本人が始め嫌がっていたような抵抗もなくなって、没法子(メイファーズ)!といった気持ちになっていた。

当時八路軍は中国統一のため国民軍との戦いを続けていた。その為重用されて与えられる仕事の種類としては、男子は戦闘第一線の後方で弾運び、戦傷者の輸送の為の担架隊要員、そして後方病院の炊事雑役であり、女子は看護婦要員としての作業であった。

この頃になると、次第に苦境に追いつめられて行く日本人を見る現地満人達の目も変って来た。
かっては支配階級として君臨した日本人が終戦とともに没落した地位に下ったことに喝采していた軽視の目より、哀れみの目で見るようになっていた。
特に中年以上の連中の私達を見る目に、やさしさと同情の気持ちを感じるようになっていた。

階下のジメーさんは目が優しく働き者だった。つんとして言葉も交わさない奥さんと違って、片言の日本語で話しかけて来る。仕事を回してくれるだけでも有難い。
中国の庶民の生活というものは簡単なもので、ジメーさんの日常生活を見てもびっくりするものだった。
例えば洗面器1個で、朝は洗面し、食事を作り、同じ洗面器で洗濯するといった調子であった。

一応は平穏だった日々に、あせりといらだちの感情が蠢きはじめていた。

5月の初めに、私に対して徴用の通知がやってきた。隣保組長の小父さんが、”徴用ですよ。明後日、9時に県庁前に集まって下さい。まあ、勤められだけつとめてきてください。ご苦労ですがお願いしますよ” とのことで、これ以上はお互いに口に出さず、”勤めてきましょう”とあっさり応じた。新しい生活に何かあることを期待していたのかもしれなかった。

5月X日、旧県庁前に徴用されて集まった日本人男女は、点呼と簡単な身体検査を受けて夫々の割り当てられた勤務地に分散して行く事になった。
私は安東市の郊外”R"にある八路軍の病院要員として勤務する事に決まった。
現在の奥田さんの家とは反対の方向ではあるが、同じ安東市であり、歩いて1時間位の距離である。
最悪の場合、国民軍と戦闘している最前線に駆り出されて、弾丸運びをやらされても文句のいえない私達であった。

ほっとした気持ちで一応家に帰り、奥田さん一家に報告して暫くの別れを告げた。
不安そうに見送る小母さんや、雪子さん姉妹にわざと元気を装って家を出た。
これも又運命のしからしむるところ、成り行きに任せる以外になかった。
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