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2012年1月15日 (日)

追想!河北省一君

今朝も気温1度とまずまず。空は一面灰色、好天気は望めそうには無い。
朝から少し右膝が痛い、昨日買って来た灸を試す。熱くないので利くのやら利かないのやら頼りない。
やはり本物でないと駄目かな。

元々運動していて捻挫したところだし、お皿が少しずれている。何でも無いのと違うのだから,灸ぐらいでは駄目かもしれない。

今連載を始めた河北君の軍隊時代、どうやら兵卒のままでいたらしい。幹部候補生の志願はしなかったのかなあ。それらしい記述は見えないし,本人からもその真相を聞いたことは無い。
もっとも将校にでもなっていたなら脱走もできないし、シベリア送りで死んでしまったかもしれない。
運がよかったか悪かったか,何とも云えないな。
私は一年早く入隊したから,恩給年限に達し,現に僅かだが恩給を支給され,若き時代の無償奉仕の償いをしてもらっている。
彼にはその特典もなかったのだろうが、よく頑張って公認会計士までなった。法律が施行されて初回の会計士ではなかったかと思う。
一度私の設立した会社に来て貰い、(資本金1億円の会社だったから)決算の承認など必要があったらお願いするからと、頼んだことがあったっけ。3年足らずで倒産したから実現には至らなかったが。

温厚な友誼に厚い真摯な男だった。同窓会でもいつも輸入ウイスキーを持参してまわし呑みしていた酒好きでもあった。しかし崩れることは絶えてなかった。
彼が残した2冊の手記を縁の薄かった私にまで読んでくれといって、別々の同窓会の席で他には隠して寄越してくれた好意は生半可ではなかったと感じている。

20年前横山君から彼が戦前から付き合っていた熊本の友人から聞いたと云って,彼の死を知らせて来た。暗然としたが、当時の私は微小企業を立ち上げて火の車であった。何をする術もなかった。只遥か西方の空をのぞんで冥福を祈るのみであった。

今読んでいる高峰秀子の自伝”わたしの渡世日記”に見えるように、人は自分一人では生きて行けないと繰り返し述べられている。
運命に振り回されながらも,自分勝手に生き抜いたと思っていてもやはりそれだった。
私の生涯も彼女に匹敵する。そして人の助けで長寿を貫いた。
彼女が貧乏暮らしを誇張しているが,私のはもちろん何段も段が違う。
生きるにたるだけの年金が入るだけである。
墓に持ち込むものは変わりはなかろうが。

河北君はしかしよくやった。新京での脱走の決意は、もちろんならざれば死である。
彼の風貌からはとても想像出来ない。
私もそうだったが、人生に一度は死を決意して飛び込む勇気が発揮出来るかどうか。今にして思えば、神の試練とも受けとめるのだがどうだろう。
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河北君のシベリア送り脱出行(手記)(その4)

2、明日は死ぬぞと覚悟した前夜

8月10日の夕闇が迫って来た。部隊は殆ど一昼夜歩き続けてF市の城門に到着し、その前線に布陣した。
砲兵が城壁の後方に、そして城門の外に工兵が,更にその前線に歩兵が配列されて守備を固めるべく,それぞれ陣地構築を行い,更に己が身を隠すたこ壷掘りを終わったのは夜の11時頃であった。大陸の真夏は日中が長く,夜は9時頃になって夕闇が迫ってくるので、作業には便利がよかった。兵士は誰も語らず黙々とたこ壷を掘り続けた。

満天の星は、明日をも知れぬ将兵の行動をじっと見つめるかのように輝いていた。
11時半に夜食が支給された。パン一個と掌に少々の砂糖であった。これが最後の食事になるかもしれないがと思いながらも、別段特別の感情も起こらなかった。
連絡通りであれば、明朝6時頃に怒濤のごときソ連軍が押し寄せて来るとのことであった。命令により私達は朝5時まで草むらで仮眠することとなった。

こんな巡り合わせになったことに対する反発的な気持ちが無い訳でもなかった。
俺はどういう星の下に生まれてきたのだろうと考えるのも暫くで,今更どうなる訳でもなく,今までの疲れもあってぐっすり眠った。心の平静を失わなかったのが不思議なくらいであった。
大勢の戦友が周囲に寝て居るのも力強かった。誰の顔にも恐怖の表情はなかった。
明日の起床は5時、そして6時にはソ連軍を迎えて阿鼻叫喚の戦場となるであろうこの付近も今は静寂そのものである。
嵐の前の静けさは刻一刻と,次の恐ろしい瞬間を迎えるべく経過して行った。(つづく)
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