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2010年5月26日 (水)

南の国の果物の話

所々青空がのぞいてはいるが,黒雲も混じって天気はすっきりはしない。
朝気温17度はまあまあといったところか。
終日雲が垂れ込めて、何時降り出してもおかしくないままとうとう夕方になる。
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本ニューギニア戦記の著作者今田勇氏の経歴の一端を明かせば,昔の高等農林学校(後身は大学農学部)の卒業生であり、その道には興味もあり造詣も深い。その予備知識をもって以下の果物談義を読まれたい。

この南の戦線の駐留約4ヶ年半余の間に口にした果物の話。

南の果物の味は一口で言って甘味が強くこれに加え多少酸味を含み、その上に強弱はあったが異臭のあるものが多い。この中で強い異臭のあるものがドリアンで、何となく臭う物にマンゴーとジャック・フルーツ(通称パンの実)それにパパイヤ等が挙げられる。次に酸味が強く爽やかな味がする果物には、マンゴスチン、ランブータン、ノンナ・ピーサン(バナナ)にトレパン、レーシー(オランダ・ナンカ)等々が挙げられる。
先ずセラム島駐留中に食べた果物は11月頃からのドリアンと、私たちがオランダ・ナンカと言っていたトレパン、レーシーの他、大小のピーサン(バナナ)であった。11月中旬の夜中ドスン、ドスンと大きな音に目が覚めた。これは裏のドリアンの実が熟れて落ちたのだと思ったが、朝を楽しみにそのまま寝込んでしまう。
朝方早速に裏の林に入って見ると、案の定大きなドリアンの実が2個転がっていた。持ち帰ってパラン(なた)で割るとドリアン独特の異臭が部屋中に広がる。中の縦長のほうに5,6個乳白色の柔らかい果肉に包まれた種が並んでいる。これを各自勝手に抉り出し口に入れる。この果物独特の異臭がつんと鼻をつき、練乳の様な至極甘い味が口中に広がる。瞬く間に平らげてしまったが、一同また明日の落果が楽しみだと言いつつ唾を飲み込む。今ひとつこの地方ではトレパン・レーシーというのが別名のオランダ・ナンカを部落の住民がよく持ってきてくれ何時も美味しく食べた。大きな瓜位の細長い果物で全体が濃緑色で小さく柔らかい多数の突起のある皮に包まれていた。手でこの熟して柔らかくなっている皮を剥くと、繊維質の白い果肉が芳香を放ちつつ現れる。この白く柔らかい果肉を口に入れると蕩けるような甘酸っぱい、この果物特有の匂いと味が口中に広がってゆき爽やかな気分になる。
次に南方では何処ででも手に入るバナナだが、私たちは数段に重なって房のついた果柄をそのまま倉庫の片隅に吊るして置く。下の房から順々に黄色く熟してゆくので下から熟れた順に食べていったものだ。しかしこのバナナには種類が多く形も大小とりどりであるのでこのバナナの詳しい話は後に譲ることにする。
事はついでとこの南の果実の話を続けると、5ヶ年間の南の戦線で最初に口にしたものはパパイヤであった。マレー作戦の初期アロール・スター市の無人の英人宅に宿泊した時、庭の一隅に3本のパパイヤの木があった。樹高6,7mの喬木で上部に八手に似た葉柄の付け根に大小取り混ぜて14,5個の濃緑色の実が並んで吊り下がっていた。その実は長さ25cm、幅15cmくらいで糸瓜を短くずんぐりした形。これを縦に切り割ると薄い桃色の果肉が見え、中央に縦に空洞となっておりここから黒い小粒の種がぱらぱらと零れ落ちる。淡黄色の果肉を口に含むと軽く異臭のする甘い味が口内に広がる。食べ慣れるとこの異臭が更に味覚をそそるという。
次にパイナップルだがマレー半島のジョホール・バール市に入った時、この市の後背地のなだらかな丘陵地帯に、広大なパイナップル畑が畝って広がっていた。株の中央に直立した太い茎の上に大きな実をつけたパイナップルの列が、波打つように丘を越えて遥か彼方に伸びていた。手近にあった黄色く熟したパイナップルの実を切り取って、棘のある部分を斜めに切り離してその果肉の一片を口にすると、強い芳香と共に甘みの滴る果汁が胃の腑を刺激する。青いうちに採って缶詰にする人口の甘味に比べると、自然に熟れたこの果肉は驚嘆に値する美味しさであった。
次は前に一寸触れておいたが普遍的なバナナ(ピーサン)。この南の地方では何処でもお目にかかれる果物。太い柔らかな茎の上に芭蕉の葉に似た葉っぱが茂り、その間から下がった太い果柄に鈴なりにだんだんと重なってバナナhanasiwoの房がついている。
このバナナは収穫の適期になるとその幹は至極柔らかいので根元からバッサリと切り倒して収穫する。これはバナナが宿根性の植物であるので切り倒した幹の腋には既に次のバナナの芽が育ちつつあるので、切り倒しても何ら次の心配をすることは無いわけである。この収穫は適期になるとその房の色が青い時に花柄ごとに収穫し倉庫等に入れて置く。バナナはこの貯蔵中に熟れてゆくと、下の房から順々に黄色く熟れ行き、この果物独特の味が乗ってくるのである。
さてこのバナナには色んな種類の物があり、日本の店先で売られている普通サイズのものの他、小振りで味がまるやかで甘いというモンキー・ピーサンとかノンナ・ピーサンがある。
共に大きさは大人の親指大のもので、口に入れると甘い芳香が口いっぱいに広がってくる。また特大のものはブサール・ピーサンと称し、太くて長さ30cm以上に及ぶ。このバナナは果物ではなく青い時に収穫し、椰子油で揚げて主食または間食として食べるものである。そしてその味は芋並であった。
次はマンゴー。この果物は4,5cmに及ぶ大きな木になる果物である。その形は卵または長楕円形等といろいろ違った形のものがある。概ね実の大きさは15cm前後で扁平な種の周りにふっくらと着いている果肉を食べる。未熟のものは固いが熟してくると淡黄色または橙色となってくる。その皮を剥いて口に入れると多少繊維が口に残るが甘い果汁と果肉が口の中に溶ける。その際軽く異臭がするように感ずるが、この匂いがこの果物の特徴でこれで味が引き立てられ、忘れがたい果物になるのである。
ドリアン、前述のセラム島の果物で一寸触れたが、これは南国の果物の中で王様と言われている。一度口にして美味しいと思うようになると、次にはこの果物の匂いを嗅いだだけで何としても食べたくなるという濃厚な味の果物である。
樹高30mにも及ぶまっすぐに伸びている大木に生る果物である。
その果実の形は円形また長楕円形といろいろな形ものがあるが、その大きさは15から25cmくらいである。未熟のものの外皮は緑褐色をして厚くその表面は大きく鋭い棘で覆われている。この実は6週間余で完熟して、熟しきると自然に落果するので収穫期の11月から翌年2月にかけては、この木の下をうろうろする事は禁物である。
落果したドリアンは手で割ることは難しいので、バラン(鉈)等で縦の溝に沿って割ると、5つの房の中の大きな種を乳白色の柔らかい果肉で包み込んだ果実が、3乃至6個くらい並んで収まっている。その一つを指でえぐりだして口に放り込むとドリアン独特の異臭が鼻を突くが反面粘り着くような甘みが口中に広がる。
このドリアンの味は複雑で一口で言うと、コンデンスミルクの甘さに玉葱と大蒜との臭みを加え、更にチーズを混ぜ込んだと言う複雑な味であった。
初めてこのドリアンを口にする人は、先ずこの異臭に閉口して食べることを断念ししまう様だ。しかし、一旦この果物の味を覚えると遠くから漂ってくるこの匂いを嗅いだだけで食べたくなるとの事であった。しかしこの果物の異臭は万人に通用するものではないので、場合によっては人が集まるところ等には持込が禁止されることもあると言うことであった。
マンゴスチン、南の果物の王と言われているドリアンに対して、これは南の果物の女王と呼ばれているものでこれがなる木は余り高くない。この実の大きさは丸くテニスボールくらいで茶褐色の厚い皮で覆われている。丁度上部がはじけて口を開けて白い果肉が見える。割れ目が逆に着いた日本の柘榴といった感じである。
この厚めの果皮を手で割ると丁度蜜柑の実が丸く並んでいるように真っ白い果肉が6.7個丸まって綺麗に並んでいる。その一片を摘んで口に入れると上品な甘味に爽やかな酸味を加えた、シャーペット状の感触が口中に広がる。正に初恋の味だと称するがその喩えの通りの味だと思った。
次はランブータンという果物。赤色の棘のある不細工な外観と異なり、割ると中から半透明な丸まった白い果肉が現れてくる。果汁がたっぷりで甘酸っぱい味は何となくマンゴスチンに似ているが、これに比べると少し淡白であった。
最後にトレパン・レイシーだが、私は当時この果物はジャワ島またはセラム島でオランダ、ナンカと云っていた果物ではないか思った。この果物もドリアンの様に緑色の棘のある薄い皮に包まれている。ドリアンと異なり棘も皮も柔らかいので熟してくると手で皮を剥ぎ取る。真っ白いパルプ質の果肉が甘い果汁をたっぷりと含んで現れ、それを口に含むと爽やかな甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がる。正にパイナップルにミルクを混ぜたような爽やかな味であった。
南の国ではこのほかにアボガド、リュウガン、ジャック・フルーツ(パンの実)等いろいろと話は聞いていたが食べる機会が少なくその味に覚えはない。
(つづく)
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