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2009年7月31日 (金)

捕虜その2

来る日も来る日も,曇か雨か梅雨らしい日が連続して,真夏らしくない涼しい毎日だったが,一昨日,昨日と快晴が続いて、漸く真夏の大陽がぎらぎらと頭上に焼きごてを当て始めた。
今朝は灰色の空を抜け出て来る日射しはないが、あつい雲はなさそうだから、そのうち灼熱の日光が届き始める事だろう。

昼前に出掛けて壱番屋にゆきカツライスを食べる。その足でスーパーで買い物をして帰る。
もうすっかり夏の日射しの中,ちょっとの外出でもくたくたになってしまう。
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私の戦争/捕虜その2
捕虜収容所に入ったその日から連日、前の軍公路を陸続と日本軍の部隊の行列がつづいた。

光部隊のように仏印から引き上げて来たという堂々と軍靴を響かせて4列縦隊であるいてくるのもあれば、よれよれに疲れ果ててばらばらやって来る兵隊もある。
中には軍用犬を飼ってくれと置いて行く兵隊も居た。
幸い小林信繁という兵隊が軍用犬師だったので譲り受けて飼う事になった。
絶対に他のものに手を出させない難しい犬だったが、ここを去るときどうしたのかなあ覚えていない。

蒋介石が戦争の怨讐をこえて日本軍は円満に日本に帰すと明言した伝えられ、早くも送還が実行されてるとも伝えられた。
国共内戦のとばっちりを受け、国民党側の捕虜となっている我々に、取り合えず防御用にと小銃と弾薬がかなりの量支給される。聞けば共産ゲリラの出没が予測されるからということだった。また協力して戦う兵士を募集するから、申し出ろとのことでもあった。
私の隊でも中村軍曹ほか5名が、どうせ日本に帰れても碌な事にはならないだろうからと応募して出て行った。
彼らは押収された日本車を運転して、輸送などに従事しているらしく、合間にはやってきて、食の足しになるものをくれたりした。そのうち数ヶ月もするとどこかへ行ってしまったらしく消息がなくなった。

賀勝橋の駅前の商店街に行き、食い物をあさったりした。
公用で咸寧の司令部に行く時など、日本軍が残した木炭列車の機関車の横腹なんかにぶらさがっていった。汽車はものすごくいっぱいで、住民たちは勝手に乗り込んでいる風だった。

商店街の食堂に入ると、見も知らぬ住民が酒をすすめてくれたりした。
皆ひとがよかった。
しかしある日三民主義青年団というのが、漢奸だと称して、数名の男たちを捕縛して,街の広場につれて来て容赦なく銃殺した。夜遅くまでそのうめき声が聞こえ凄惨であった。

広東橋でも経験した住民に対する医療協力を実施した。だんだん知れ渡り沢山の住民が病気治療を受けに来るようになった。お礼にと持参する食糧が我々の台所を潤すことにもなった。

虎に噛まれたと言って,肩から背中にかけて手ひどい怪我をした男が担荷で担ぎ込まれたこともあった。すぐ近くの山でやられたという事で、大騒ぎになった。

住民からの申し出もあり山狩りをすることになり。兵隊数十人と部落民多数で山を取り巻いて、発砲したり騒ぎたてたりしたが、虎は出て来なかった。
アリクイの大きな奴を持参したり、ところかわれば品変わるのたとえ通り、日本で見かけない動物がいろいろいた。

我が部隊だけでも約800名もいるのだから、賀勝橋を中心に4キロ範囲くらいの民家に自由に宿営しているのだが、戦いで荒れ果てていて、捕虜を養うのも簡単ではない。
中国軍もほとんど口出しせずに自主的に管理させているらしかった。中国軍の兵士が見回るなどいうことは一切なかった。

器用な兵隊が居て,演芸会を開いたり、また麻雀、とか囲碁,将棋など遊び道具はいつの間にか沢山作られて各所で大会が行われる始末だった。

近郊に水深が1mぐらい幅3mぐらいの小川がながれていたが、釣り糸をたれても鮠ぐらいしかかからなかった。小さな沼が1kmぐらい離れた所にあったが、こちらでは2、30cmぐらいの鮒がよく釣れた。天ぷら炒めして食うとおいしかった。しかし釣り人多しで間もなくいなくなってしまった。

カエルを捕って食ったり、のびろをつんでくったり、食えるものはなんでも探し歩いた。何百人もの兵隊がやるのだから、そのうち何も無くなってしまった。

近所の住民のうちに行き、物々交換で茶碗一杯のめしを僅かな菜っ葉の漬け物を載せてくったこともあった。
翌年の正月頃になるともうじたばたしても駄目だと悟った。

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