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2006年5月11日 (木)

P-40

又戦争の話だ。一番嫌だったやりきれない思い出で充満しているから、度々思い出す。
第1次湘桂作戦が始まって(昭和19年5月)1ヶ月経った頃、制空権は完全に敵にあったようだ。
最初しばらく援護してくれていた日本の飛行機はもう全然姿を現さなくなった。爆音がしたら間違いなく米軍のP-40だった。ときおり遥か上空をP-38が飛ぶ事もあったが、襲って来るのはP-40だった。
午前、午後、夕方と定期便のごとくやって来た。特に朝のが怖かった。
夜をぶっ通して山稜をのろのろ走って、東天が白み始めるとすぐ車の隠し場所を捜しに掛かるのだが、運良く近辺にあればよし、無ければ偽装しなければならない。途端にぶんぶんと来られる事がある。
あちこち銃撃音が轟くと同時にさっと頭をかすめる低さで襲来する。
なかなかうまく隠し終わらない。そこそこにして逃げに掛かるのだが、瞬間に見つかってしまう。
引っ返して来て連射を浴びせる。
草っ原に伏せると敵から丸見え。飛行機を斜めにして覗き込む様にしてこちらを見る。笑っている様にも見える。
もちろんはっきりアメリカ人だ。
再度引き返して来る。少し移動して窪地に伏せる。ダダッと13ミリ弾が辺り一面に突き刺さる。危うく免れる。
一つでも当たれば即死、足でも手でも一本無くなる。いま生きてるんだから運がよかった。
3度も引き返して私を襲撃した飛行機はこの飛行機だ。機体にシャークの牙が描かれていたから間違いない。
戦争の写真雑誌に載ってたんだが、よく目についたもんだ。P40

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