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2006年1月12日 (木)

幼な馴染み

私が小学校一年のとき、母屋と土間2間挟んだ物置部屋にMという家族が住んでいた。
その一番おとんぼに小学校五年になる、よっちゃんがいた。上に姉さんと兄さんが一人づついたが、当時どんな状況だったか覚えていない。

よっちゃんたちは、お父さんはすでに亡くなっていて、繊維工場で働いているお母さんの庇護のもとに学校に通っていた。もっとも姉さんは既に卒業して働いていたかもしれない。
私のうちも父が外国にいて、母と子供3人ぐらしで、私が長男だが、他は赤ちゃんみたいなものだった。
よっちゃんはお母さんが夜帰って来るまでは、ほとんど一人だから、私が一番の相手で随分かわいがってもらった。
よっちゃんは本が好きでいつも本を読んでいた。といっても当時流行っていた豆講談本で、駅の売店で売っていた5銭か10銭の岩見重太郎とか猿飛佐助といったものだ。

かつがつ、いろはを覚えたての私に読んでみろと、読ましてくれた。声を立てて読んでいるうちにだんだん面白くなり、わからないことはその意味を教えてもらうのが又楽しみになってきた。
全部読み終わると、よっちゃんの尻について駅に行き、新しい豆本を買って来て同じことを繰り返したものだ。
3年ぐらいして、Mさん一家は別の大きな家に引っ越したので、たまに行き来するくらいで、殆ど交渉は途絶えた。
しかし私はこの豆本の面白さが忘れられず、生涯を通して少し進歩はしたかもしれないが、英雄豪傑が好きで、そうした関係の本や雑誌を読みふけることが多かった。
上級の学校に進んでも得意科目は歴史地理の類いだった。

軍隊に入隊するため、満洲から帰国した年の大晦日、よっちゃんが私を広島に誘い出した。彼は当時広島市役所の土建課の製図室にいた。すでに休日だったが、私にその職場を見せるために誇らしげに案内してくれた。
夕食を奢ってくれた後、宮島の弥山に登りご来光を拝もうということになった。
まだ時間があるというので、遊郭につれて行かれた。
当時未だ童貞だった私がもじもじして寝ようとしないので、相方の女郎さんがトランプでもしましょうかというので、うなづいて始めた。

時間が来て宮島に参拝し山登りをしたのだが、頂上に達して石段で足を踏み外して足首を捻挫してしまった。
やはり遊里に足を運んだりして、神聖な場所を踏んだので天罰があたったのだと後々まで悔いが残った次第だった。

よっちゃんは最後の別れと自覚していたかどうか、戦場に出かけた私がこうして生き長らえているのに、内地にいた彼が終戦直前の原子爆弾でいまだに生死不明のまま、二度と再会することは出来ないでいる。歴史はやはり皮肉である。

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